「ヤセ菌」が増えるとハゲも止まる

フイルミクテス門の細菌が「デブ菌」たったとしたら、バクテロイデス門は「ヤセ菌」といえるでしょう。

バクテロイデス門の細菌が腸内にて優勢になると、適性体重まで自然と数値が落ちていくはずです。この種類の細菌は、高食物繊維・低カロリーの食事をしていると繁殖力を増します。フィルミクテス門の細菌のようにエネルギーを執拗にとり出そうとはしません。そのため、エネルギー過剰になって太ることがなくなります。

さらに、腸内での水素の発生量が増えるので、活性酸素が除去され、頭皮と毛球の健康がよみがえっていきます。

反対に、フィルミクテス門が優勢になると、ハゲの進行にも影響を与えることが考えられます。肥満になるからです。

太っている人は年齢以上に老けて見えますが、それは体型だけの問題ではありません。肥満の体内では活性酸素が過剰に発生しやすく、老化が進みやすいのです。

私たちの細胞は1万年前から変わっていません。食べ物をいつでも簡単に入手できることも、肥満体になることも、体にとっては不自然なことです。体に不自然な状況は、体内での活性酸素の発生量を増やします。こうなると、薄毛がますます進行していくことは避けられません。

ただし、髪をよみがえらせるために気を配るべきは、抜け毛ではないことも知っておいてください。抜け毛は自然の現象だからです。

「毎朝、枕に大量の髪が落ちている」「髪をとかすたびに、たくさんの毛が抜けてしまう」、「シャンプーをしたあと、ドサッと抜けた毛を見るとゾッとする」

など、抜け毛を心配する声をよく聞きます。抜け毛は目立つ現象であるため気になるものですが、大事なのは生える毛を増やすことです。元気な毛髪が育つよう、頭皮と毛球の健康をとり戻すことです。そのために、バクテロイデス門の細菌を増やす食事によってダイエットすることは、非常に有効です。腸内において水素の発生量が増加し、活性酸素を除去できるようになるためです。

毛髪は、決まったヘアサイクルを持っているものです。産毛のような細くて小さい生まれたての毛が生えてくると、その毛は次第に太くなりながら1日に約0.3ミリずつ成長していきます。この時期を「成長期」といいます。この期間は約2~6年間あります。

髪は成長を終えると「退行期」を迎えます。毛球の退縮が始まり、まもなく完全に退化して、毛の成長がストップします。この期間はだいたい2週間です。

最後に「休止期」が訪れます。完全に成長を止めた毛球の下から、新しい産毛が生えてきて、もともとの毛を押し出します。これによって抜け毛が生じます。

こうしたヘアサイクルを1本1本の毛が持っています。また、頭皮にはおよそ10万本にも及ぶ毛髪が生えています。その毛髪のヘアサイクルを考えてみると、一日に約50~100本が抜けるのは当然のことなのです。

ただし、短く細い毛が抜け始めてきたときには要注意です。髪の毛が十分に育つ前に抜けてしまっている表れだからです。髪を育てる力が失われてきているのです。

元気な毛髪を育てるには、バクテロイデス門の細菌を育てることです。そのためには、食物繊維たっぷりの食事を腹8分目にする習慣を持てばよいのです。

 

「薄毛」という生活の前科歴

数年前、ハリウッドの有名女優が、乳がんを予防する目的で、がんのない乳房を切除したニュースが世界をめぐりました。彼女がこの決断に踏み切った理山は、「母親が乳がんで亡くなり、自分にも乳がんを起こす遺伝子が見つかった」というものです。

私は、がんや生活習慣病もそして若々しさも毛髪も、遺伝子よりも後人的な生活習慣のほうが重要なカギを挑っていると考えています。たとえがんを起こす遺伝子を持っていたとしても、必ずがんになるとは限らないのです。

なぜなら、がんの発症には、エピジェネティクスによって変化したエピゲノムが関与しているからです。たとえば、がんになりやすい食べ物ばかりとったり、がんを起こしやすい食生活を続けていたり、そうした環境に仕み続けていたりすると、エピゲノムががんを起こすように修飾されていきます。結果、人はがんを発症します。

これは薄毛の進行にも当てはまります。私たちは人それぞれさまざまな環境で生き、飲み食いすることで、細胞にエピジェネティクスな変化が生じ、薄毛が起こるのです。

そう考えると、エピゲノムはまるで自らの行動を示す「前科歴」のようなものだと思えてきませんか。不摂生が限界を超えて蓄積された時点で、目に見える形で細胞死や細胞老化が起こり、それらは「刑務所行き」になります。

薄毛に置き換えていえば、無意識にも頭髪をいじめるような生活を続けていると、髪の毛をつくり出すあらゆる細胞や組織が壊れて毛の再生能力を失い、抜け落ちて頭皮をさらして生きなければならなくなるということです。

ですから、「母方のおじいちゃんがハゲている」と遺伝性を恐れることはないのです。本当に恐れるべきは、遺伝子よりも悪しき生活習慣です。

そもそも、私たちの体は約37兆個の細胞からなっていますが、始まりはたった1個の受精卵でした。受精卵のDNAのコピーをくり返しながら細胞分裂し続けることによって体は成り立っています。腸をつくる細胞も、頭皮の細胞も、毛髪をつくる細胞も、もとを正せば一つの受精卵から始まっているというわけです。

なぜ、一つの受精卵から異なる組織が次々に現れるのでしょうか? 答えは、使っている遺伝子が異なることにあります。

すべての細胞は同じ遺伝子を持ちあわせていますが、使っている遺伝子は異なります。その違いは、エピジェネテイックな機構によってなされたものです。細胞ごとに使わない遺伝子は制御され、不活性な部分に押し込められるのです。

このエピジェネティックな変化を起こす、もっとも大事な要素の一つが食事です。

食べるものによってエピジェネテイックな変化は起こってくるのです。

たとえば、母親のとる栄養は、遺伝子以上に胎児の成長に影響を与えることが、動物実験でも確かめられています。「アグーチイエロー」と呼ばれているネズミがいます。その種類のネズミの遺伝子には余計なDNA情報があるので、肥満体であり、さらには体の毛が黄色であるという特徴を持っているのです。この「アグーチイエロー」のメスのネズミに普通のエサを食べさせると、子供は母親と同じ黄色の体毛を持って生まれてきます。しかし、妊娠前、妊娠中、妊娠後期にわたり母親ネズミにビタミンB12、葉酸、コリン、ベタインを食べさせると、体毛が黄色ではなく褐色であり、さらにはスリムな子が生まれてくるのです。

このように薄毛になったり、ハゲで悩んだりする原因は遺伝子のせいなどではなく、生活習慣のせいと言えるのではないでしょうか。

 

ホームレスの人にはハゲはいない?

私の職場は、昼間は、1階の靴屋さんが、入り囗がわからないほど靴をたくさん並べていますが、夜になって靴が片づけられると、今度は軒先に路上生活者がやってきて寝床にします。私か夜に仕事で職場に戻ったときなどは、「夜分にすみません。用事があるので、ちょっと通らせていただけますか」と、路上生活者に仁義を切って入ります。

ある夜のことです。研究室に戻ると、路上生活者たちがなにやら祝杯を上げていました。「楽しそうですね。いいことでもありましたか」と尋ねると、「お兄ちゃん、いいことを聞いてくれた。オレたち、明日の仕事にありつけたんだ。一緒に一杯やらないか?」と、嬉しそうにいいました。本当は急いでいたのですが、私は彼らの飲みかけのビールを少しもらい、「そりゃあ、よかったね」と答えたのでした。、

そんなこともあり、彼らと話す機会が増え、なかには、私にとってはとても興味深い話がありました。彼らは、落ちたものを拾って食べることがよくあるといいます。しかし、下痢や腹痛に苦しむことはそれほど多くなく、花粉症やアトピーなどのアレルギーを持っている人もほとんどいないというのです。

しかも、ハゲている人がいません。多少ボサボサではありますが、髪がフサフサと頭皮を覆っている人がほとんどです。

ホームレスの人たちは、1日3食、おなか一杯になるまでの食事のすることは少ないと思われます。栄養状態も衛生状態も、よいとはいえないはずです。大都会の中とはいえ、風雨をしのぐだけの寝場所で休息する彼らの生活は、まるで1万年前の暮らしのようです。

人体を構成している細胞というものは、どうやら1万年前から変わっていないらしいのです。そのことからもわかるように、細胞を一番元気にする方法は、ジャングルの中を裸同然の姿で暮らしていた1万年前のような暮らしをすることなのです。逆に、1万年前には存在しなかったようなものを体に入れたり浴びたりしてしまうと、体内では活性酸素が大量に発生してしまい、当然毛根にダメージを与えることになってしまうのです。

こんな有名な研究があります。米国ウィスコンシン大学では、アカゲザル(平均寿命26年)を使った実験で、カロリー制限で若さを保てることを明らかにしました。通常の量のエサを与えた続けたサルは、20歳以上になると毛がだんだん薄くなり、皮膚もシワが目立つようになってきました。一方、30%のカロリー制限を一日もかかさず行ってきたサルは、毛がフサフサでツヤがあり、皮膚も張りがあって若々しさを保っていました。

人間とサルでは、長寿をまっとうする方法も若々しさを保つ方法も違ってきます。ですから、人がカロリー制限のみで長寿や若返りを図ることは難しいと、私は考えています。

それを踏まえたうえで、この研究結果と路上生活者の暮らしを照らし合わせて考えてみると、「満腹になるまで食べる」「食べたいものを食べたいときに口にできる」という飽食の生活は、毛髪力の活性化を妨げているのではないか、と確信しています。

毛髪力をよみがえらせるには、「腹8分目」の食事法が大事な条件の一つになります。